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執筆者の写真ふるさと津島を映像で残す会

浪江の避難住民ら、帰れぬわが家をドローン撮影「故郷の光景を後世に」(河北新報)




 東京電力福島第1原発事故で汚染された福島県浪江町の津島地区で、避難住民らが地元の風景を映像で残す活動を続けている。フォトジャーナリストの協力も得て、小型無人機ドローンを使って空から撮影。「家屋が解体される前に古里の風景を後世に残したい」と意気込む。


 冷たい風が吹きすさぶ中、津島の赤宇木地区上空を1機のドローンが飛行する。埼玉県富士見市に拠点を置くフォトジャーナリスト野田雅也さん(44)が操縦し、家屋の全景を付属のカメラに収めていく。

 住宅地図を見ながら1戸ずつ回る。1戸にかける撮影時間は10分ほど。これを津島全体の約500戸で繰り返し、四季折々の風景の撮影や住民のインタビューなども行う。根気の要る仕事だが「住民の熱意がドローンを動かしている」と話す。

 津島には原発事故で放射性物質が降り注ぎ、約1500人の住民は散り散りになった。今も空間線量が高く、立ち入りが厳しく制限される帰還困難区域に指定されている。

 撮影は12人の避難住民有志でつくる「ふるさと津島を映像で残す会」の依頼で6月に始まった。

 きっかけは家屋の解体だった。一部地域が住民帰還を先導する特定復興再生拠点区域(復興拠点)に認定され、国費を投じて集中的に除染やインフラ整備をすることが決まった。地域の風景が壊される前に記録に残そうと、避難住民が5月ごろから準備した。

 残す会の会長に就任したのは二本松市に避難する佐々木茂さん(65)。「手付かずで、ボロボロになってしまったわが家を他人に見せたくない」と気乗りしなかったが、続けることで思いが変わった。

 「一部地域は除染して住めるようになるが、大半は除染もされず100年たっても帰れない。国に捨てられた村と住民の姿を記録にとどめる意義は大きい」

 撮影は年内に終え、来春にもDVDにまとめて通信販売する。避難住民が国と東電に慰謝料の増額などを求めた集団訴訟で、現状を訴える資料として福島地裁郡山支部に提出する計画もあるという。

 11月中旬の撮影には、赤宇木に自宅がある志田昭治さん(67)=福島県大玉村=も同行した。訪問は半年ぶりといい、長男が生まれた時に植えた桜の木をいとおしそうに見上げながらつぶやいた。

 「いろいろな花を眺めながら過ごせる古里が大好きだった。朽ち果てたが、ここには家族との楽しい思い出がいっぱいある。われわれが生きた証しが映像として残るのはうれしい」


2019年12月11日水曜日

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