消えゆく古里をドローンで記録 浪江町津島の住民、野田監督が協力(西日本新聞)






福島第1原発事故で今もなお帰還困難区域の指定が続く福島県浪江町津島地区の住民が、町の除染・復興事業で一部の家々の解体が進む中、地区の全家屋約500戸の姿をドローン空撮で記録している。協力しているのは福岡県久留米市出身の映画監督、野田雅也さん。産業復興をうたう国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」の拠点づくりでにぎわう浜通りと対照的に、地図から消えゆく山村の集落に名残を惜しむ住民主導のプロジェクトだ。


 津島は江戸期に相馬藩の木材生産拠点として栄え、戦後は満州引き揚げ者が入植した阿武隈山系の山村。キノコや山菜など豊かな山の幸でも知られたが、事故で高線量の放射能で汚染され、立ち入り規制が続いている。

 住民たちは全国各地に散り散りに避難したまま、いつ帰れるか見通しが立たない。家々は、一時帰宅も困難で手入れができず、今では草木に覆われ、畳が腐ったり、イノシシやサル、ハクビシンなど野生動物が侵入したりするなど荒廃が進んでいる。

 町は地区の旧中心部の避難指示解除を目指し、国の「特定復興再生拠点」整備の対象地域として新たなまちづくりに着手した。対象地域の民家の除染・解体が前提で、住民は「家を放置すれば子、孫への負の遺産になる」と自宅解体を受け入れた。

 こうした中、住民有志12人は「暮らしの証である家屋が消えてしまう前に、ふるさとの情景を映像で残したい」と昨年5月、「ふるさと津島を映像で残す会」(佐々木茂会長)を結成。行政区長会に趣旨説明した上で、6月から撮影を始めた。

 空撮を選んだのは、集落から離れた一軒家が散在し、道路が草木に覆われて近づけない家や高線量の場所もあるからだ。撮影は、ドキュメンタリー映画「遺言-原発さえなければ」の共同監督の一人である野田さんに依頼した。


百年後の子孫のために


 野田さんと同会メンバーは、住民の土地勘とゼンリン地図を頼りに、時にはやぶをかき分けながら撮影を重ね、昨年暮れまでに公共施設も含め計約520カ所の映像を撮り終えた。

 空撮映像とともに住人のインタビューや荒れた室内も撮影。震災直前に亡くなった人の追善法要の祭壇を残し家人が避難した当時のままの屋内も撮った。伝統芸能・田植え踊りや古老の伝承歌、獅子舞の笛の音も収録した。

 自宅の空撮映像を見て、「これで(気持ちの整理がついて自宅を)壊すことができる」と、万感の思いから涙を流す人もいたという。野田さんは「地上から家の位置を探り、ドローンを操作するのは大変だった。それぞれの家にはそれぞれの歴史や物語がある。インタビューでは事故前の暮らし、津島での楽しかった思い出、避難状況などを語ってもらった」と話す。

 佐々木会長は「百年後の子孫のために、ふるさとの『記憶遺産』として空撮映像を残したかった。原発事故で山村が消えていく現実を広く伝えたい気持ちもある」と語った。(吉田昭一郎)


 ◆クラウドファンディングで製作費を募集 空撮映像作品は今年6月にDVDとして完成予定。現在、クラウドファンディングで製作費を募集中。「津島 ドローン」と検索し特設サイトから申し込む。

8回の閲覧

※ この活動は立正佼成会一食平和基金の助成を受けています。

Copyright © 2020 ふるさと津島を映像で残す会 All Rights Reserved. 

特定商取引法に基づく表記